実務者研修とは?
実務者研修とは、介護の基本知識や技術を学ぶための研修で、介護福祉士を目指す方にとって重要な資格の一つです。
実務者研修は、もともと「ホームヘルパー1級」という資格でした。実務者研修は、平成28年度から「介護福祉士国家試験」の受験資格として必須条件となりました。
介護職員初任者研修との違い
実務者研修を取得するにあたり、介護職員初任者研修との違いが気になる方もいるでしょう。ここでは、実務者研修と介護職員初任者研修の違いを解説します。
介護職員初任者研修との違いは、下記のとおりです。
受講時間が長い
介護職員初任者研修で学ぶことは、介護の基礎となるものがほとんどです。一方で、実務者研修はより発展的・専門的な知識を学びます。
そのため、介護職員初任者研修の130時間に比べ実務者研修は450時間と、3倍以上もの講座を受けることとなります。
専門分野を学べる
『喀痰吸引』と『経管栄養』は、原則として医者や看護師のみ行うことが認められていました。
介護職員初任者研修では上記2点を学ぶことはできませんが、実務者研修では医者や看護師のみ行うことが認められている専門分野を学ぶことができます。 (※実際にご利用者様に喀痰吸引等を行う際は別途「喀痰吸引研修」の受講が必要となります)。
介護福祉士試験の受験要件となっている
実務者研修は、国家試験である介護福祉士試験の受験要件であることに加えて、「サービス提供責任者」に昇格するための基準となります。
介護福祉士実務者研修修了者はなぜ就職・転職に有利?
訪問介護事業所には「サービス提供責任者」という人材の配置基準が定められており、サービス提供責任者になれる資格要件が「介護福祉士」、「旧ヘルパー1級」、「実務者研修」となっています。以前は、「旧ヘルパー2級」でもサービス提供責任者になることができましたが、2018年に改定されており資格要件から除外されました。このことから、サービス提供責任者になれる人材は数が減少したため、実務者研修の重要性が向上しています。
また、居宅介護などのサービス別・利用者ごとによって、サービス提供責任者の最低配置基準が変わり、利用者が多い・サービス提供時間が長いといった訪問介護事業所には、それに合わせた人数が必要となります。実務者研修の資格所有者は、医師・看護師でしか行えない業務を対応することもできるため、就職・転職にとても有利になります。
実務者研修を受講するメリット
介護職で活躍するためには、実務者研修の取得は欠かせません。
実務者研修は、業界内から必要とされていることに加えて、受講することで得られるメリットも多あります。
介護福祉士の受験資格が得られる
介護福祉士の資格試験を受験するには、3年以上の実務経験と実務者研修の修了が条件となります。「実務経験3年以上」とは、具体的には在籍期間1095日以上、実働日数で540日以上という意味です。特別養護老人ホームの職員や介護事業所のホームヘルパーなど、介護に関係する業務に従事されていた方が対象となります。正社員だけではなく、パート勤務の方も含まれます。
もし受験に申し込んだ時点で日数が不足していたとしても、試験が実施される年度の3月31日までに日数を満たせれば受験可能です。実際の職場で経験を積んでいるので、実技試験は免除されます。
介護業務のことを深く学ぶことができる
平成24年4月から法改正により、一定の研修を修了した介護職員は医療機関などと連携することで、「喀痰吸引」や「経管栄養」といった医療行為を行うことができるようになりました。ただし、登録済みの事業所での業務のみ、研修で学んだ内容のみという条件がつきます。
「喀痰吸引」と「経管栄養」には喀痰吸引等研修(第二号研修)が必要になります。しかし、実務者研修を修了している場合は、喀痰吸引等研修が免除されます。ただし実地研修は必要です。
サービス提供責任者になれる
実務者研修修了後は、サービス提供責任者として働くことができます。サービス提供責任者も介護業務は行いますが、介護利用者へのヒアリング、ヘルパーの指導、介護スケジュールの調整など、マネジメント業務がメインとなります。要求されるスキルは多いものの、その分やりがいを感じられる仕事です。また、訪問介護事業所には利用者の人数に応じてサービス提供責任者を必ず配置しなければいけないので、とても重要な人材になります。
実務者研修修了者の他にも、介護福祉士・旧ヘルパー1級も資格要件に含まれているので、サービス提供責任者になれます。以前は、実務経験を3年以上積んだ介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)でもサービス提供責任者になることはできましたが、資格要件から除外されています。
スキルアップでき就職・転職でも有利
より専門的な知識が必要となり、そのための介護過程やケア・認知症などを学ぶことができるので、スキルアップすることができ、自信に繋がります。専門的な知識を持つことは、利用者にとっても安心できる要因にもなります。
未経験の方でも働ける求人が多くある介護業界ですが、サービス提供責任者になれる資格を持つ人材はまだ多くはないので、実務者研修の資格を所有していると採用される確率が上がります。また、条件に「実務者研修」を必須としている求人にも手を伸ばすことができるので、所有していない人と比べると大きく有利に働きます。
実務者研修の取得方法とカリキュラム
自宅学習・スクーリングを通して専門知識を学ぶことで、実務者研修を取得することができます。
実務者研修は450時間の受講で取得可能です。
実務者研修のカリキュラムは、下記のようになっています。
カリキュラム | ||
科目 | 時間数 | 学習内容 |
1.人間の尊厳と自立 | 5 | 利用者の尊厳を守るための考え方や基本理念を学びます。 |
2.社会の理解 I | 5 | 介護職員が知っておくべき介護保険制度に関する知識の理解を深めます。 |
3.社会の理解 II | 30 | 社会保障制度や障害者自立支援制度、介護実践に関わる諸制度や生活保護制度などを中心に学びます。 |
4.介護の基本 I | 10 | 介護福祉士制度や利用者の尊厳を守るための理念、業務に携わる際の虐待防止方法などを学びます。 |
5.介護の基本 II | 20 | 利用者の生活や支援法を理解し、実践する際に必要な連携の取り方と介護を行う側のリスク管理を学びます。 |
6.コミュニケーション技術 | 20 | 利用者や利用者の家族、介護スタッフなど関わる人たち全体とのコミュニケーションの取り方と、物事を分かりやすく的確に伝える方法を学びます。 |
7.生活支援技術 I | 20 | 居住環境の整備や移動、介護補助、入浴、排泄をはじめとした、利用者の生活において必要な生活支援を学びます。 |
8.生活支援技術 II | 30 | 生活支援技術 Iで学んだ内容を、利用者の身体と心の両方の状況に合わせて提供する方法を学びます。 |
9.発達と老化の理解 I | 10 | 老化による身体の機能・心の変化が、どのように日常生活へ影響を与えるかを学びます。 |
10.発達と老化の理解 II | 20 | 人間の成長や老年期の発達、心理などを知り、高齢者に多く見られる症状などを通して課題は何かを学びます。 |
11.認知症の理解 I | 10 | 認知症が与える生活障害や行動、それに対するケアや理念、サポート方法などについて学びます。 |
12.認知症の理解 II | 20 | 医学的側面からみた認知症はどのようなものかを知り、認知症の原因・変化などから認知症患者の家族への支援方法を学びます。 |
13.障害の理解 I | 10 | 障害者福祉の理念について理解を深め、障害が与える生活への影響や障害児を持つ患者の家族への支援方法に関する基本を学びます。 |
14.障害の理解 II | 20 | 医学的側面からみた障害はどのようなものかを知り、障害児を持つ患者の家族への具体的な支援方法を学びます。 |
15.こころとからだのしくみ I | 20 | 移動や食事、入浴、排泄をはじめとした身体の仕組みや、介護現場で必要な技術を安全に実践するための知識を学びます。 |
16.こころとからだのしくみ II | 60 | こころとからだのしくみ IIで学んだ内容を心理面とつなぎ合わせて、利用者を援助する際に観察するポイントを学びます。 |
17.介護過程 I | 20 | 介護過程の意義や目的、展開、チームアプローチに関する知識などを習得します。また、チームで目的に合った介護を提供し、連携方法を学びます。 |
18.介護過程 II | 25 | 介護過程の実践的展開や、施設・在宅で暮らす高齢者の介護過程がいかなるものかを知り、一連の介護過程を学びます。 |
19.介護過程 III | 45 | 介護過程 IIで作成した介護計画をもとに、利用者の特性を考慮した適切な介護過程の展開や、利用者の生活の質を向上するために必要な介護過程と連携について学びます。 |
20.医療的ケア | 50 | 喀痰吸引や経管栄養をはじめとした医療的ケアを学びます。 |
実務者研修は受講資格を設けていないため、無資格の方でも受講することが可能です。
介護業界でさらに活躍したいと考えている方は、実務者研修を受講することをおすすめします。
実務者研修は「介護育成サポートセンター」がおすすめ!
「介護育成サポートセンター」は、株式会社福井メディックスが手掛けている、実務者研修を開講している学校です。
当校では、仕事をしながらでも通えるよう「通信学習」というシステムを採用しており、週1回の通学学習が可能なクラスになっています。通信学習は、空き時間を有効活用して学習を進めることができるため、時間のロスがありません。
また、実務者研修は基本的に講師による対面指導のため、実践的な介護過程や医療的ケアなどの事例を学ぶことができます。
受講生同士のグループワークを通して学習を進めることによって、介護に重要な役割を持つコミュニケーションの方法を学ぶこともできるでしょう。
実務者研修の取得を考えている方は、ぜひ介護育成サポートセンターでの受講を検討してみてください。